山行報告>鈴鹿の奥座敷イブネ、クラシへ行く

2011/5/6

 
【日 程】平成23年5月6日
【山 名】イブネ、クラシ
【標 高】イブネ1,160m
【天 候】曇り
【メンバー 】福福
【地 図】※デジタル地図の該当部分を切り出したもの
【タイム】
 伊勢谷小屋前7:43−−−8:26根の平峠8:36−−−9:08愛知川出合9:09−−−9:25小峠9:38−−−10:28イブネ北端10:33−−−10:42クラシ10:49−−−11:04イブネ11:11−−−11:19佐目峠11:19−−−11:21昼食11:48−−−12:09杉峠12:12−−−12:41雨乞岳12:53−−−13:03東雨乞岳13:08−−−14:38休憩14:47−−−15:04武平峠トンネル15:06−−−15:36表道分岐15:36−−−15:57中道分岐16:05−−−16:38湯の山温泉バス停
       


鈴鹿の山で登っているのは手軽な県境尾根上の山ばかりで、主稜線から外れた特に愛知川本流の西にある山はあまり意識することもなかった。今回カミさんと二人で出掛けたイブネとクラシも元々はY井さんが計画したもので、私自身はそんな山のことは知らなかった。

近鉄湯の山温泉駅からタクシーで朝明渓谷の伊勢谷小屋の前まで入り、そこから歩き出して根の平峠への分岐を左手に入ると、平成20年の出水で大きく被害を受けた跡に出る。久しぶりに歩くのではっきりした記憶もないのだが、一部に道が付け替わっているところもある。今は復旧が進められ植林などもされているところを過ぎるとやがて元通りの道になって、緩い坂道をアカヤシオの花を楽しみながら登れば根の平峠に到着する。かつては笹に覆われた峠だったが鹿害で見違える程すっきりとしてしまった。根の平峠は鈴鹿主稜線上にある峠で、この先この峠を越えて一旦下るが尾根の西側もやはり笹藪の面影はない。途中から上水晶谷・杉峠方面への標識に従う。

上水晶谷出合の木橋を渡って2分程行くと右手に愛知川へのルートを指した標識があるのでそこから愛知川本流に向かう。この道は一般ルートではないが踏み跡がはっきりしているので迷うことなく愛知川出合に達する。河原に出ると対岸の木にテープが巻き付けてあるのが見えるので徒渉点はこの場所で間違いないようだ。本流の水量を心配しながらやって来たのだが、このところ雨もない為全く問題無い水量で靴も濡らさず渡ることが出来た。ここを渡ったら目の前の谷を詰める。ほとんど水の流れていない涸谷で岩屑がぐずぐずの足場の悪い谷を登ると、時折薄い踏み跡やテープの目印が見つかる。二股が途中2カ所程あるがこれは全て左側の谷を登る。トラロープが下がった最後の詰めのところが一段と急になっていて、ここを登りきれば小峠に到着する。

この峠で一息入れてから小尾根に取り付くと、尾根上にはアカヤシオ、コバノミツバツツジ、アセビ、足下にはイワウチワの花が見られた。部分的に急な所もありキツい登りだが、標高1,050mを過ぎると傾斜が緩んでようやく楽に登れるようになる。イブネ北端付近はまだ芽吹き前の林で、今日の曇り空のせいでちょっと寒々しく感じる。今回の目的地であるイブネとクラシそれと1123Pを結ぶ三角形の中にはブナもあるがあまり高い木は見当たらず、高原状の地形になっている。以前は笹が生えていたらしいのだが今はシダの枯れたものが目立つ程度で非常にすっきりした景観になっている。イブネ北端からクラシへは広々としていて良い雰囲気だ。ただしクラシは灌木の中のピークで山頂らしい感じはしない。

クラシから戻り次の目的地のイブネ山頂へ行くと単独の男性がいてチョウシは何処かと聞かれた。そういう山は知らないので地図を見たらと言ったら地図は持っていないと言う。エアリアマップを見せると、ここだとその男性が指差したのはタイジョウの東1kmにある1084Pだった。甲津畑から登ってきたと言っていたので佐目峠手前の分岐を見逃してしまったらしい。イブネ、クラシ、タイジョウにも以前に登ったことがあると言って、その男性は引き返して行ったのだが、それなら何故間違えたのだろうと奇妙に感じた。気になったので家に帰ってから調べてみると、チョウシというのは三角形の台地の一角である1123Pのことをそう呼んでいると分かった。男性が確信を持って指し示した場所とは明らかに違う。なぜ男性はそんな間違いをしたのか?

平日に単独でこんな場所に来る位だから、山歩きには自信があったのだと思う。歩くスピードも我々より速そうだった。想像だが男性は以前に登ったイブネまで来て、まだ時間もあるのでかつて耳にしたチョウシに登ってみたくなった。しかし場所が分からない。偶然出会った登山者の地図を見ればチョウシの位置分かると考えたのだろう。ところがエアリアマップにはイブネ付近で標高点の記載があるのは、男性がチョウシと間違えた1084Pと杉峠の頭の1121Pだけで、肝心の1123P(チョウシ)は表記されていない。杉峠の頭は登る途中に通過しているので、残る1084Pがチョウシであると男性は結論づけたのだ。エアリアマップでなく2万5千図の方を見せていたら正しい位置へ向かったかもしれないが、それよりも男性の計画性のなさと地図を持たないというのが決定的な誤りだと思う。

風の冷たいイブネでは休憩できる場所がないので佐目峠まで下って、アセビの木の陰で昼食タイムにした。佐目峠は稜線上の鞍部ながら谷を登り詰めて反対側の谷に下るといういわゆる峠越えの道はない。ただ南向きに開けた谷は傾斜も緩そうなので、根の平峠に戻る場合はこの谷を下れば杉峠経由よりも早く行かれそうに思える。昼食後は杉峠の頭(1121P)に登り返すが、その途中にタイジョウへの分岐標識があった。あの男性はここからチョウシと誤解した1084Pに向かっただろうか。頭から下った所が杉峠で雨乞岳への縦走路と峠越えの道(千種街道)が交差している。上水晶谷にあった標識に杉峠では携帯のアンテナが立っている表記がしてあったので繋がると思ったのだがDocomoは駄目だった。

一部に残雪の残る道を雨乞岳に向かって登り始めると、始めの内は歩きやすかったがやがて笹をかき分けて登るようになった。こういう笹藪の道が本来の鈴鹿らしいと言えば鈴鹿らしいのだが、今はどこもすっきりしてしまったので油断していたら雨乞岳から思わぬ反撃にあったという感じだ。雨乞岳と東雨乞岳周辺の道はこの笹藪と足下がガラガラして歩きにくい。ただ、東雨乞岳の山頂だけはすっきりしていて、後で出会った三人パーティはここでテントを張ると言っていた。平坦な山頂だし広いので雨乞岳よりはこっちの方が居心地は良いだろう。
東雨乞岳から武平峠までの下りは結構長い。ポイントとなるような分岐も少ないので余計にそう感じてしまう。山登りを始めた頃にこの道を雨乞岳に登ったこともあるのだが、40年前のこととてとんと記憶にない。

武平峠は鈴鹿スカイライン(自動車道)がトンネルで抜けているのだが、水害による崩落で三重県側は現在も通行不能の状態である。スカイラインに平行する登山道から被災の様子を見る限りではまだ復旧の目処は立ちそうにない。この登山道は御在所の表道、中道、鎌ヶ岳への三ツ口谷コースが分岐する主要な登山道で登山者によく使われている。それぞれの分岐を通り過ぎるたびに長い1日コースももうすぐ終わりという感じになる。その縦走終了点の湯の山温泉バス停には16時38分着で、伊勢谷小屋前の歩き始めから概ね9時間の行動時間だった。日帰りらしからぬ長時間山行だったが、歩き甲斐と目的の山の雰囲気に十分満足した一日だった。/福西

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GPSで記録した登山ルートの地図画像が見られます(画像ファイルは200KB前後です)
オンライン地図(山旅倶楽部)の2万5千全国地図とカシミールを使用していますが、画像を縮小している為、縮尺は正確ではありません
地図上で登山ルートを赤色の実線で表示しています。歩いたコースが往復で異なる場合や行動が複数日に
渡る場合は、色を変えている場合があります(例:登りを赤色、下りを紫色。一日目を赤色、二日目を紫色)