山行報告>深田百名山を目指す 11 大菩薩嶺

2014/4/10

 
【日 程】平成26年4月10日
【山 名】大菩薩嶺
【標 高】2,056.9m
【天 候】曇り
【メンバー 】福福
【タイム】
 丸川峠分岐駐車場7:23−−−8:40上日川峠8:50−−−9:14福ちゃん荘9:15−−−9:53大菩薩峠10:00−−−10:46大菩薩嶺10:56−−−12:19丸川峠12:45−−−13:51丸川峠分岐駐車場
       


「大菩薩」の名が広く世間に知られるようになったのは、大正2年から新聞連載で始まった長編小説「大菩薩峠(中里介山)」のおかげだが、山としての人気は戦後の登山ブーム以後の事である。深田久弥が大正12年5月に初めて登った時には、晴れた日曜日であったにかかわらず全く登山者に出会わなかったのに、数十年後に再訪した時には超人気の山に変貌していたそうだ。

土曜日に峠下の勝縁荘に泊まって、翌朝出発しようとした時の情景をこう書いている。「あくる日曜、あさ表へ出ておどろいた。蜒々(えんえん)たるハイカーの行列が登ってくるではないか。大かたはズック靴に小リュックサックという軽装で、中にはレーン・コートに短靴・手提げというのも混じっている」。当時は夜行列車を利用しての山登りだったわけだが、それでも東京から日帰りできること、簡単なハイキングコースであったことが山の初心者達を惹きつけたようだ。狭い山域のわりに数多くの営業小屋が有ることでもこの山の隆盛ぶりをうかがい知ることができるが、その登山ブームが去った後も、今度は百名山で引き続き登山客を集めているわけだから、大菩薩嶺は幸せな山なのだろう。

今回、我々が登ったコースは冬季通行止めとなっている丸川峠分岐にある駐車場から上日川峠〜福ちゃん荘〜大菩薩峠〜大菩薩嶺〜丸川峠〜丸川峠分岐駐車場という周遊ルートで平成4年の9月に登った時とほぼ同じコースである。

朝7時過ぎに駐車場を出発して、車止めのゲート脇を潜って150m程進み道が大きくカーブする所から登山道に入る。冬枯れの葉を落とした林の雰囲気が好ましい道を歩き、一旦車道に戻った所にある千石茶屋の前を通りぬけて再び登山道に入る。迷いそうな所には標識がきちんと整備されているのはさすが人気山域である。

緩い尾根道は崩落により車道へ迂回させられる所もあるが、上日川峠まではほぼ登山道を歩く。ロッジ長兵衛が建つ上日川峠は広々とした峠で4月中旬を過ぎれば下のゲートが開いてここまで車で上がれるようになる。だから車の通れない今の時期は閑散としたもので人影も全くない。

上日川峠から次の福ちゃん荘まで我々は雪の残る登山道を歩いたのだが、その直ぐ横を平行して車道(シーズン中は営業車のみ通行可能)が通っているので、無駄なアップダウンをせずに車道を行った方が合理的だったようだ。4月から営業を開始している筈の福ちゃん荘だが平日のこの日は宿泊客が居なかったのだろう、小屋も無人状態だった。

福ちゃん荘の所から唐松尾根を雷岩へ登るコースも有るのだが、我々は富士見山荘、勝縁荘の前を通って大菩薩峠へと至るルートに進む。残雪の量が少し増えてきたが、この道は除雪されていた。峠に建つ介山荘への資材運搬に利用する道なので、小屋開けまでには道を通す必要があるのだ。木の間から富士山が見られる所があるのだが、この日は天気は良いものの気温が高くお目当ての富士山はかなりぼんやりしていた。やがて油圧ショベルで除雪中の現場に到着して、脇を通らせてもらいそこから先は雪を踏んで行ったのだが、除雪箇所からものの200mも歩けば大菩薩峠だった。だからこの道の除雪完了まではもう間もなくだ。

風が強くなったので介山荘の建物の影で一枚着込んでからいよいよ主稜線に踏み出す。振り返ると相変わらずもやって輪郭のはっきりしない富士山が有り、その手前に記憶に無い湖(大菩薩湖)が見えた。帰ってから調べてみると平成11年完成のダム湖だそうなので見覚えがないわけだ。稜線上は吹き溜まりや日陰部分に残雪があるものの、地表面が現れている箇所が多い。賽の河原から登り返して塩山市が2000年に立てた標高2,000mの標柱を過ぎ、雷岩から先の樹林帯に入ると程なく大菩薩嶺山頂に着く。山頂と言っても樹林に囲まれていて全く展望はないので、頂上自体の魅力は薄い。

頂上から先は雪の増えた稜線を下り、テープのある箇所から左の山腹へ進路を変えるが、このトラバースは日陰で雪が堅くなっている上に傾斜がきついので緊張する。高をくくってアイゼンを持ってこなかったのは間違いだった。やがて尾根に出たので尾根芯に沿って真っ直ぐ下り、標高1,830m辺りで夏道に合流した。しかし、その後も雪の上に踏み跡は増えたもののトラバースコースが続き、丸川峠に近づくまで気の抜けない状態が続いた。

その丸川峠は谷間に開けた明るい場所で、ゆっくりしたい所だが計画より時間が遅れ気味なので昼食もそこそこにして腰を上げる。出発してからしばらくは緩やかな道だったが、やがて急な尾根の下りになり、足の運びに気をつけながらひたすら下る。尾根の末端まで降りると古い林道に出てそこからは沢沿いのなだらかな道になり、やがて朝出発した丸川峠分岐駐車場に到着した。

結局この日は一人の登山者に出会うこともなく、深田久弥が初めて登った時と同じ状況だなぁと思いながら帰り支度をしていると、どこからかひょっこり単独の登山者が現れた。なので全く同じでは無くなってしまったが、静寂な一日であったことは間違いない。シーズンオフの平日に限れば超有名山域でもこんな事もあるものだ。

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GPSで記録した登山ルートの地図画像が見られます。
オンライン地図(山旅倶楽部)の2万5千全国地図とカシミールを使用していますが、画像を縮小している為、縮尺は正確ではありません
地図上で登山ルートを赤色の実線で表示しています。歩いたコースが往復で異なる場合や行動が複数日に渡る場合は、色を変えている場合があります(例:登りを赤色、下りを紫色。一日目を赤色、二日目を紫色)