【日 程】 令和6年9月23日 【山名・標高】 笠取山 1,953m 【天 候】 小雨後曇り 【メンバー】 福福 多摩川水源の山である笠取山の直ぐ下に水干(みずひ)と言う場所がある。沢を下流から詰め上がるとやがて流れが消え、水が干上がる所の意味だが、逆に上流側から見れば多摩川の最初の一滴が始まる場所である。日々多摩川の水の恩恵を受けている身として、一度訪ねてみたいと思っていた所で今回ようやくそれが実現できた。 登山口の作場平まではバスの便はないので、塩山駅からタクシーを利用した。この交通の不便さがこれまで来られなかった理由なのだが、予約しておいたタクシーに乗り込めば、ジャスト45分で作場平に到着する。トイレも有る駐車場は連休とあってほぼ満車状態で、この山はマイカーを利用する人が多そうだ。晴れを予想して出かけてきたのに、タクシーを降りるとしょぼしょぼと小雨が降っていて、予想外にカッパを付けての出発になった。 駐車場の直ぐ先、「源流のみち」の標柱の所から車道を離れ林の中に入っていく。ちなみに「源流のみち」とは東京都水道局が管理する道の事で、この辺りを含め多摩川上流域の広範な森林を都が保護、管理している。お陰で開発の手も入らず、我々登山者は自然のままの林を楽しむことが出来るわけだが、元々は水源地の荒廃を憂いた東京府が明治34年に山梨県下の丹波山村、小菅村の御料林を譲り受けて府自らが森林経営を始めたことによる。明治41年から42年にかけて当時の東京市長尾崎行雄が現地調査して水源地経営案を作成後に水源林管理は加速し、明治45年の山梨県恩賜県有林、府有林の東京市への譲渡、大正年間の山梨県、府下の私有林の買収、昭和に入ってからも私有林の買収を続け、昭和42年の小河内ダムの建設当時に買収したダム周辺林を合わせ、経営面積21,634haのほぼ現在の水道水源林の形になった(都水道局HPによる)。 これらの先人達の先見性には全く頭の下がる思いだ。 登り始めは石畳の道で笹と針広混交林のいわゆる雑木林の中を緩やかに登っていく。 駐車場から30分程で一休坂分岐に着き、ここで一休坂を経由する尾根コースとヤブ沢峠を経由する沢コースに分かれるが尾根コースを選択する。幸い雨の方は時折枝葉に乗った雨滴が落ちてくる程度になったので、次の一休十字路でカッパを脱ぎ、ついでにお握りを一つ食べた。引き続き緩やかな道を進む。このコースは笠取山直下を除き急登というところはなく、ゆったりした気分で登れる。それが良い。 一休坂分岐から1時間15分程で笠取小屋に着いた。今日は祝日なので管理人さんが入っていて、小屋の片付け等をされていた。ここまでの途中でも小屋に泊まったという人達と出会ったので、休日にはそれなりの人は入るようだ。小屋前のベンチに座って残りのお握りを食べていると傍らに座った男性が話しかけてきて、この山には詳しい人らしく色々情報をもらった。 笠取小屋で笠取山までの行程の3分の2来た事になり、残り3分の1を歩きだすと、板敷きの道がずっと続いている。こういう道は初めてだなぁと思いながら進んでいくと広い草原状の中に雁峠への分岐が現れた。奥多摩には珍しい開放的な地形で、これが笠取山の人気の秘密かと思う。その直ぐ先でコースは笠取山へ稜線を直登するものと水干に向かうものに分かれるので、我々は先に水干を目指して山腹のコースに進む。 途中、「水源の水場」とある下り道には向かわず、真っ直ぐ進むと東京都水道局が建てた標柱がありそれには「水干 多摩川の源頭 東京まで138km」書かれていた。その後ろのダイモンジソウの咲く崖に小さな窪みがあるのが水干のようだ。中を除いてみても水の垂れている様子はなかったが、雨でも降れば滴る程度にはあるのだろう。実際に流れ出ている様子は100m程離れている「水源の水場」で見られるのだろうが、たとえ水は出てなくともこの場所に来られた事に私は十分満足した。 水干から先に進むとシラベ尾根を経て中島川橋に至るルートに合流し、その直ぐ先で主稜線縦走路にぶつかる。右に向かえば黒槐山方面、左が笠取山で短いが急な登りを過ぎれば狭い岩稜帯の笠取山山頂に着く。生憎ガスの中で展望はなく記念撮影だけして先に進むと、山梨県が建てた「山梨百名山」の標柱のある展望場所に出た。先程の山頂よりは小広くて眺めも良いはずなのだが、しきりに雲が湧いて麓の甲府盆地も見えたり見えなかったり。 ここでも写真を数枚撮っただけで西に向かって急な道を下り、午前中に通った笠取山直登ルートと水干への山腹ルートの分岐まで戻り、小さな周遊を終えた。その先に行きには寄らなかった「小さな分水嶺」と名付けられた丘に立ち寄ってみると、この場所が多摩川、荒川、富士川の3つの河川の分水嶺の位置である事を示す石柱と案内板があった。こんな小さな峰に降った雨がわずかな位置の差で流れていく先が大きく変わるという事に何だか感動した。 笠取小屋で最後の休憩を取り、下りは行きにこのベンチで隣り合った人のアドバイスに従いヤブ沢峠経由とした。この道は笠取小屋の軽トラが上がってくる道なので幅広で平坦と歩きやすい。峠から先も引き続き平坦な道が続くが沢沿いになると、やたらと沢の渡り返しが多いと感じた。一休坂分岐で朝通った道と合流し、後は作場平まで一直線に下って3時に予約したタクシーの時間には余裕を持って到着した。 今回は行きたいと思いながらなかなか実行できなかった山に登れたのが良かったが、同時に綺麗な林に清らかな水、歩きやすい道と三拍子揃った笠取山に魅了された。この点はカミさんも全く同意見でまた行っても良いと言っている。この所ややハードな山登りが続いていただけに、おおらかに歩ける笠取山は小粒だが満足度の高い山だった。 ![]() ![]() |
笠取山 / ふくさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ