薬師岳登山口の折立へのバス便は昔に比べるととても不便になっている。富山駅6:10発と有峰口10:00発の1日2本のみで、それも事前予約が必要である。我々の場合は予約が取れずタクシーにしたが、圧倒的に多いのはマイカー利用者で折立の駐車場は非常に混雑していた。ただ、往復や周回コースの場合は良くても、室堂や新穂高に抜けるような縦走の場合は困るだろうなぁとバスの不便さが気になった。 1日目 当日は薄曇りのお天気で強い日差しを避けられるという意味ではありがたかった。 折立ヒュッテの直ぐ先にある愛大山岳部遭難碑に手を合わせてから、樹林の中の急登に取り付く。見通しの効かない中を黙々と登るしか無いが、登山道脇に大きな杉の木が現れるのが立山地域らしい。 青淵ベンチまで一気に登るとここで視界が開けて劔岳の姿も見られる。しばらく休んでから傾斜の緩まった道を登っていくと、標高2千m位で森林限界を超えて展望が広がるようになる。草原状の道は土壌流失を防ぐためにずっと以前から木道を設置したり、岩を敷き詰めたりして登山道整備がなされているが、この日もヘリで運ばれたグリ石を使った整備が行われていた。ありがたいことである。 次の五光岩ベンチからは正面に薬師岳山荘の建物や薬師岳がよく見えた。明日はあそこまで登るのだ。引き続き緩い傾斜の道を登っていくと見慣れない鳥が現れた。黒い頭に頬から喉元が赤いウソのオスだった。近くにはもう1羽メスもいる。こんな高地に出現する鳥とは思ってなかったのでちょっと驚いたが、その内に2羽共ハイマツの中に隠れてしまった。遠くに太郎平小屋も見えてきたが、見えてはいてもなかなかこれが近づかない。それでも歩いてさえいればいずれは着くもので、14時半に小屋に到着して今日はここまで。無事初日の行動を終了した。 2日目 この日は朝から良いお天気だった。準備に手間取り6時に小屋を出発。キャンプ場のある薬師峠まで下ってから沢沿いの急登を登る。水の流れが消えると涸れ谷の岩のゴロゴロした登りになり、そこを登り切ると伸びやかな薬師平に着く。薬師平の先で再び岩ゴロの登りになるが右手に黒部五郎岳が意外と近くに見えた。薬師岳山荘まで15分の道標を過ぎると、道は緩やかになりやがて山荘に到着する。小屋前で小休止の後は目の前の標高差200mの尾根を真っ直ぐ登り、登り切った所が東南尾根との合流点である。 昭和38年(1963年)1月に視界不良の為登頂を断念した愛知大学山岳部パーティが下山途中に誤って迷い込んだのがこの東南尾根だ。パーティ全員13名が死亡するという未曾有の遭難事故となったそのきっかけの地に今はケルンと石組みの避難小屋が建っている。そこからは平坦な道になり最後の一登りで薬師岳山頂に着いた。山頂にはお堂があって内部に金色の薬師如来像が納められている。 居合わせた人に写真をお願いしてから周りの景色を楽しむ。北アルプスの名だたる山が一望でき、頭の部分だけだが富士山も見えた。こんな気持の良い山頂もそうはないと思わせるこの日の薬師岳山頂だった。 山頂からの下りは来た道をゆっくりと帰る。私もカミさんも本当に下りに弱くなって、ともかく時間はかかっても事故を起こさないようにと慎重に行く。途中で登ってくる人達ともよくすれ違ったが、この天気なら彼らも頂上では快哉を上げる事だろう。途中の薬師峠のキャンプ場では朝通った時より大幅にテントの数が増えていて、その後も続々とキャンパーが到着している。これだと張り綱を跨がないと通れないほどのテントの数になるんではなかろうか。 太郎小屋には12時半前に帰着して名物の太郎ラーメンにありつけたが、食べ終われば他にする事もなく小屋の周りの景色を楽しむことで二日目は終了した。 3日目 この日は下山日でなるべく早い時間に下山を開始するため、朝食(5時スタート)ではなく前日に弁当を用意してもらっていた。それを小屋で食べてから5時過ぎに出発すると今日も天気は良さそうで歩き始めは快調だ。時間は十分にあるので急がず下ることを心がけて1時間も歩かぬ内に五光岩ベンチでまず一服。 その後もゆったりモードで下っていたが、青淵ベンチ手前の1934pの所で対向の登山者2人が木の梢の方を指さしている。その方向を見てみると、ホシガラスが枝に止まっていた。ホシガラスは山では珍しい鳥ではないが、2人は知らない鳥だったようだ。これで一つ知識が増えたね。 青淵ベンチで休憩後にいよいよその先から急降下が始まる。より慎重に構えるのでどうしても時間がかかる。後ろから追いついて来た人や下から登ってきた人には都度道を譲り、ともかくゆっくり下りていく。それにしても登ってくる人が引きも切らぬというにはこういう事かと言うぐらいすれ違う人が多い。考えてみれば3連休の二日目でお天気も良いとなれば当然かも。 私の計画では5時半に小屋を出て折立に着くのが8時半としていたのが、実際に到着したのが9時直前。実は9時にタクシーを予約していたので、もう少しで予約時間に遅れるところだった。小屋を早出して良かったと思ったのだが、おかげでタクシーを待たせずに済み、有峰口での電車への乗り換えもスムースに行った。 そんな事で今回はお天気に恵まれ、山頂からの素晴らしい眺めが堪能できた楽しい山登りになった。一つ意外だったのは花が少なかったことで、チングルマなどは太郎小屋近くまではもう種になっているものが多かったし、ニッコウキスゲも期待していたほどの花は無かった。7月下旬にしてこの状態というはちょっと拍子抜けという感がある。他の山域でも同じなんだろうか。 ![]() |
薬師岳 / ふくさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ