山行報告>三日目は雨になった、唐松岳と五竜岳

2025/8/3〜5


【日 程】  令和7年8月3日〜5日
【山名・標高】唐松岳2,695.9m、五竜岳2,814m
【天 候】  1日目曇り、2日目曇り、3日目雨
【メンバー】 ふく

1日目
八方尾根から唐松岳へは北アルプス初見参と言うか、私が本格的な山登りを初めて経験したコースである。なめてかかった山登りが、こんなに辛いものだったかと思い知らされた場所でもある。

当時は大型のゴンドラだったが、今は6人乗りのテレキャビンで兎平まで運ばれて、その後4人乗りのリフトを2回乗り継ぐと標高1,830mの八方池山荘に労せずに到着する。機械力というのは大したものだ。お天気の方は頭上は晴れているのに周りの山はガスで隠れていて、やたらと暑い割に眺めは今一つという期待外れなコンディション。朝から体調の不良を訴えているカミさんはちゃんと登れるだろうか?

大勢の登山者がほぼ数珠繋ぎという感じで第二ケルンへ。さらに八方池まで登ったが、結局カミさんの体調は回復せず、ここから引き返す事を決めた。池畔で二人並んだ写真を撮ってもらって別れた後は私一人が炎天下の登りを続ける。上の樺を過ぎた先に扇雪渓がある。初めて登った時、ここまでで既にバテバテの私はザックを放り出して、雪渓の上で大の字になってしまった。今から54年前の話しである。

丸山ケルンまで来ると今日泊まる小屋もあと1時間程となりぐっと近づいた気がする。そして計画より1時間早く小屋に着き、昔ながらの蚕棚の一隅に場所を確保した。小屋のカレーで昼食を済ませてから不要品を残して目の前の唐松岳往復に出発する。小屋を出て直ぐの所にコマクサの群落があった。少し時期を過ぎていたようだが、久しぶりの出会いは嬉しかった。小屋から20分強かけて登った頂上もガスのせいで眼前の五竜岳さえはっきりせず、しばらく粘ってみたものの状況は変わらず、諦めて小屋に戻った。夕食時間までは談話室と自分の寝床で時間を潰し、食後は横になっている内に消灯時間にも気づかず寝入ってしまった。

2日目
翌日もお天気の感じは昨日と同じだった。御来光を見るために唐松岳山頂に登ってる人達もいたが、私は食後に小屋から五竜岳を目指して出発し、直ぐに牛首の鎖場に到着した。まだ体のほぐれて無い時間帯の鎖場通過は緊張する。バランス感覚も悪くなっているので、腰引け状態でなんとか通過した。この日の中で最も長い鎖場はこの牛首の鎖場で、他にも何箇所かあるがいずれも短い。

ひたすら下って下りきった所から大黒岳を越えた先が最低コルでここから登り返しになる。急登は無いのでゆったりしたペースのまま登り続けられる。いかにも稜線漫歩という感じの良い尾根道を過ぎるとまもなく白岳で遠見尾根への分岐になる。目の下に五竜山荘があり丁度物資を運んで来たヘリコプターを間近で見られた。

ここでも不要品を小屋横に残し、ザックを軽くして五竜岳を目指す。この登りの途中でもコマクサの群落があり、やっぱり撮影してしまう。やがて岩稜帯に入って行くがペイントがしっかり付けられているので道を間違う事はない。小屋から概ね1時間程で分岐に着いて、本来ならここからキレット越しに鹿島槍の威容が目の前にも現れる筈なのだが、山頂部分がガスに巻かれていて残念な姿しか見られない。

五竜岳山頂は分岐から100mほど北にあるのでそこまで進む。山頂の岩陰に男性か一人いるのは分かったが、他に人影は無く仕方なく自撮りで記念撮影を済ませた。ここでもしばらく粘ってガスの切れるのを待ったのだが、その甲斐の無かったのは昨日の唐松岳山頂と同じだった。切り上げて小屋に戻っても五竜山荘は宿泊受付が12時からなので、それまでは部屋に入れない。外のテーブルで小屋で買い求めたお稲荷さんと生ビール、持参した焼酎でお昼にしたが雨だったらどうするんだろう。

やっと12時になって宿泊手続きをしたところ、唐松岳山荘では請求されなかったカミさんのキャンセル料もしっかり取られた。ここは理由の如何を問わずキャンセル料の運用が厳格だ。案内された新館の部屋に電源コンセントの他にUSB-A、USB-Cの充電端子まであるのには驚いたが、更に驚いたのはトイレがシャワートイレだったことでこんな山小屋は初めてだ。ただし、設備は進化しても部屋の一人あたりのスペースは狭小で詰め込み主義なのは旧態依然だ。

12時から夕食時間の5時までひたすら部屋で横になっていたが、そうだと思い立って今回の山行報告をスマホのメモ帳に書き始めた。この作業は夕食を挟んでもなお続き、暗くなって文字が見え無くなった所でようやく終了とした。色々とやる事のあるテント泊と違い小屋泊りの場合はこんな事でもしてないと時間が潰せない。今後も小屋での空き時間はこういう作業に当てよう。

3日目
同室の4人パーティが3時起きして出発準備を始めたのでこちらも予定より早く目が覚めてしまった。しかし、30分以上かけてガサゴソ支度した挙げ句に雨により停滞を決めたようで二度寝態勢に入ってしまった。出発の条件は前日に決めておくべきことなのに、全く何なんだという気分だ。

5時の朝食を終えて、強風と雨で視界の悪い中を出発したが、白岳を越えたら強風はなくなった。主稜線がどうやら壁になっているようだ。風が弱まると雨の方もそれ程強い降りではないことが分かりホッとする。この下り始めは岩場のザレた箇所の続く狭い尾根で、西遠見山までが要注意区間だ。昨朝同様にへっぴり腰で下って西遠見山を越えると雪の残る小さな池(西遠見池)があり、道も平坦な歩き易い道に変わる。こうなると自然に歩行ペースも上がって、これまでのスローペースを挽回する勢いで進む。

小遠見山はピークに寄らずに直下の巻き道を進んだが、巻き道分岐の所に「五竜登山口」の標識があり、そこより下部はトレッキングコースと表示されている。トレッキングコースになったからと言って道の状態が変わる訳ではなく、ゴンドラ降り場から小遠見山までは軽装でも気軽に登ってこられるという意味でのトレッキングコースの呼称なんだろう。

ほぼ止みそうな小雨状態の中、晴れていれば眺めの良さそうな尾根道を下っていくと大きなケルンのある地蔵の頭に着く。この先、運行中のリフト脇を下っていけば、ゴールのアルプス平ゴンドラ乗り場だ。駅舎の近くが高山植物園になっていてコマクサも見られるが、天然物を見てるのであえて立ち止まることもない。

8時56分、予定していた時間より1時間以上早くゴンドラ駅舎に到着して今回の山歩きを終了した。当初の計画を振り返ってみるとカミさんと二人の予定だったので山中2泊で考えていたのだが、一人なら1泊2日でも十分可能なコースである。カミさんが取りやめた段階でそのように計画を変更していたなら、前日中に余裕を持って下山できて、今日の風雨にも遭わずに済んだわけだ。更に前日中に連絡すればキャンセル料も必要なかったので、そのようにとっさの切り替えが出来なかったのが残念だった。状況の変化に合わせて柔軟に計画を見直していくことができれば、山登りはもっと快適なものになる。今回はそんな反省と教訓を得た山歩きだった。



 
トップページへ戻る
五竜岳 / ふくさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ