室生火山群にある隣り合った2つの山、兜岳と鎧岳。いかにもセットで登ってくださいと言わんばかりの山名だが、実際にそう登られていることが多いようだ。 この山に以前登ったのは平成元年1月で、高原ロッジ口というバス停(現在のバス停名は曽爾横輪)で降り、目無橋を経由して兜岳にまず登り、その先は峰坂峠に下ってから鎧岳に登り返した。下山は新宅本店前バス停を予定していたが、気がつけば一つ手前の葛(かつら)のバス停に出ていた。当時は標識類も少なく道も分かりにくかった記憶だ。 今回はその葛バス停から峰坂峠に向かい、峠から兜岳を往復した後に鎧岳に登って、下山は新宅本店前と計画した。 近鉄名張駅からバスで葛バス停まで行く。途中、青蓮寺川沿いの香落渓と呼ばれる狭い谷間を通るが、川の両岸には見事な柱状節理が続いてなかなか見ごたえがある。特に川岸部分はあたかも護岸ブロックを積み上げたかと思わせるような、見事な造形美である。 バスの車窓からその柱状節理を楽しんでいると、「アサギマダラまつり」の幟が目に入ってきた。ちょうどこの日が祭り当日だったようで、アサギマダラの食草であるフジバカマ栽培地の祭り会場横をバスは通過していった。しかし、フジバカマの畑というのは聞いたこともないが、もちろん見たのも初めてで、目論見通りここにアサギマダラが大量に飛来してくるのだろうか。 予定通り葛バス停で下車して、バス進行方向右手にある郵便局の脇道に入る。バスに乗り合わせていた山姿の男性は反対方向に歩いていったので、別ルートから鎧岳を目指すようだ。脇道に入ると目の前に鎧岳が飛び込んできた。なんと言っても中腹を彩る柱状節理が大迫力だ。ただ、東側の曽爾高原から眺めるとこの柱状節理のせいでいかにも鎧岳という感じになるのだが、ここからだと山の形が三角形になってしまい、鎧というイメージにならないのが残念。 舗装された道を登る内につい通り過ぎてしまったが、道路が大きく左にカーブする手前に案内標識があるのでそれに従う。しかし、この道はあまり歩かれてなく踏み跡は薄く道は悪い。この山道を行っても舗装路をそのまま行っても神社の所で道は合流するので、歩きやすい舗装路を行ったほうが良かった。 合流後は杉の植林地に入って踏み跡も明瞭になる。ジグザグの登りを続けるとやがて鎧岳と兜岳の鞍部である峰坂峠に着き、ここから兜岳に向かって急登が始まる。 登り出して直ぐに男女のペアとすれ違ったが、これが山行中に出会った唯一の登山者で、そう言えば前回登った時も出会ったのはたった一人だけと記録にあった。日曜日というのに人気のない山である。崖っぷちに付けられた細い道をたどって到着した兜岳山頂は三角点もなく、平成元年に登った時には山名表示版もなかったとあるが、今は立派な山名標識がある。ただ、南側の眺望を得るために切り払われた木々が再び成長して視界を遮るようになったため眺めはあまり良くないが、隣の鎧岳と正面の倶留尊山から曽爾高原はなんとか視界に入る。 計画した時間よりかなり早めに山頂に着いたので、ここでのんびり昼食をとってから来た道を峰坂峠に戻った。峰坂峠から次の鎧岳へは距離的には兜岳への道とほぼ同じだが、標高が少し低い分、急登はないし崖っぷちを歩くこともなく坦々と登っていく。 辿り着いた山頂は木々に遮られて眺望はほぼなく、兜岳山頂が自然林の中だったのに対し、こちらは植林内のピークで全く面白みがない。こういう所は写真だけ撮ったらさっさと下山してしまおう。植林地内を下って今回は間違わずに計画していた新宅本店前バス停に鎧岳からちょうど1時間で到着した。新宅本店前バス停の方が葛バス停より有利な点は、曽爾高原からのバスも利用できることで、おかげで早く帰宅できる。 さて、30年ぶりに登った印象だが、コース標識が非常に良く設置されていたことで、地元が一生懸命整備しているのだと感じた。ただ、両山とも終始植林の中を歩くので眺望はなく、肝心の山頂からも眺めも悪いので人気のないのも致し方なしという気がする。隣の国見山や住塚山が好展望地であるだけに、魅力の差は歴然としている。 山名が格好いいと言うだけでは人は寄ってこない。こういうのも名前負けというのだろうか。 トップページへ戻る
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